カテゴリ
以前の記事
2008年 02月 2008年 01月 2007年 11月 2007年 10月 2007年 06月 2007年 05月 2007年 04月 2007年 03月 2007年 02月 2007年 01月 2006年 12月 2006年 11月 2006年 10月 2006年 09月 2006年 08月 2006年 06月 2006年 05月 2006年 04月 2006年 03月 2006年 02月 2006年 01月 2005年 12月 2005年 11月 2005年 09月 2005年 07月 その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
空の彼方の遠景から、小さくヘリコプターの影が見え初め、爆音が谷間に木霊して、たびちゃん 城、への訪問者が、ざわめき始めた。今日は、カトマンズに戻る。 空は抜けるように青い。 現地責任者が、子供と戯れている私に声をかけた。で、振り返ると、10人ばかりの男が突っ立 って、私を見ていた。一人ひとりの紹介が始まるが、ネパール語の長い名前は覚えようがない。 ともかくも、一人ひとりと、私は握手は交わす。 どうやら、このメンバーは<旅ちゃん大学>の話で、ここまでやって来たらしい。プロジェクトの 関係者が昨夜集まった、と私は理解した。現地責任者は、ネパール語で構想を語り、その後、 英語で、一人ひとりの男たちが入れ替わり立ち代り、挨拶を繰り返した。ここまでは、いつも通り の進行で、私にためらいはなかった。予めの話は、すでに責任者がたっぷりと昨夜打ち合わせ たはずだ。ここは、社交辞令で良いはずだった。 最後の男が、やや、風貌が特殊な匂いがした。小さな違和感。 ——こっちが、この地域のマオイストのボスです。 そう、責任者が紹介した。 30代の、精悍な顔の男は、私に笑いかけて握手をしたが、目だけは笑っては居なかった。 普通の服装で現れた男の背中のリュックは変っていた。一般家庭に使われる形の電話機が背 中に縫い付けられていて、一見、滑稽だった、が、リュックの中には充分な量の銃が入ってい る、らしい。腰には、手榴弾が、ぶら下がっていた。 確かに、その目は異常な<まなざし>だった。しかし、目を除けば、愛くるしい表情ともいえなく はない。戦場の目だ。私の人生での経験で、流石に、若いが、ボスになる、何かを持っていそう な、といって、全てのトップになるには、まだ若さの残った顔だった。 少なくとも何か違和感はあったが、私は、嫌いではなかった。 ——はじめまして、そして、よろしく 私には、そう返す以外には無かった。私は、この地域では道化キングだ。道化キングとして振舞 う以外には無い。 たびちゃん大学は、この地域の川沿いに作られる構想だ。そして、そこはマオイストの管理下に あるらしい。好きであれ、嫌いであれ、はじめるとなると付き合わざるを得ない。今は、この地 域、といよりはネパールの半分の地域は同じ状況にある。 大学を作ろうという教師たちとともに、ついに、マオイストがやってきた。 必然といえば、必然だ。別に驚くことではない。 話の途中で電話機が煩く鳴って、男は消えた。 人の居ないところで話したいのだろう。そういう会話もある。 。。。。。。 ヘリが離陸を始める寸前になってボスが戻ってきて、そして、飛び立つ私に笑いかけ、大仰に手 を振った。目も、少し笑っていた。私も、手を振りかえした。また、私は戻ってくる。次回は、すこ し、ゆっくりとこの男と話してみたい、と思いはじめていた。 そう思わせる<何か>は、確かに、この男にはあった。極限での風雪は男を作るらしい。 自分の国の間の抜けた男にはない、何かは存在した。 私は、飛び立ってから、幾度となく、私の城を、勝手にキャンプ地に使った<使用料>の請求を 忘れた事を思い出した。 ーーまあ、いいか と、苦笑しながら、ヒマラヤの空に舞い上がった。 マナスルは、相変わらず、雲の上に起立していた。
by tabibito9999
| 2007-05-03 01:30
| ネパール漂流記
|
ファン申請 |
||