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楽しまない街は無い。 私は一時間、さまよって、その街の<へそ>を探り当てた。 いわるゆる旧市街の中に、<その>小さな広場があって、そして、中世が匂っていた。 カビの匂いのようなものが立ち込める中に、石畳の上、あっちこちらでパラソルが広げられ、レ ストランやバーの椅子が並んでいる。その中を、生演奏でショパンのピアノ曲が流れていた。 瞬間、サルツブルグに似ているような気がして、そして、ブリュッセルにも似ていると思った。が、 向こうが王宮に囲まれた7階建てなら、こちらは庶民の4階アパートに囲まれているのが、いか にもポーランドらしい、といえば言えなくも無い。 少なくても、ここは<ロシア>ではない。それは、すぐに解った。 。。。。。。。 小さな写真ギャラリーがあった。 小さな展示会が、取り残されていた。 絵で言えば超リアリズムというような写真が壁に4枚だけ残っていた。若い作風だ。3人でやっ た展示会の一人の分だけが残っているらしい。単純に考えれば12枚でやった展示会なのだろ うか。 私の微熱が、ささやいた。 そろそろだ、と。 私はギャラリーの男に向かって、此のギャラリーで個展をするには幾らかかるのかと尋ねた。 男は、何をバカなことを聞くのか、という顔で私を眺めかえしてきた。ギャラリーのオーナーが気 に入れば無料で良い、と男はいった。つまりは、こっちでは、売れれば幾ばくかを手数料の形で 取る形式なのか、と私は勝手に解釈した。 。。。。。。。。 私は油断した。 ワルシャワに到着したとき太陽が出ていたので、パリよりも遥かに暖かいので、驚いて薄着でホ テルを出てしまった。日が落ちかけて一気に後悔が襲ってきた。底冷えが厳しかった。 あわてて、かろうじて持っていた薄手のセーターと、細身のカシミヤのマフラーを首に巻いた が、それでは、間に合いそうも無い。 寒さが、私を刺している。 。。。。。。。。。 私は、男にホームページのアドレスを伝えて、写真の在りかを教えた。 興味津々と言う顔で男は画面に、私の小さな写真を浮かび上がらせて、ゆっくりとスクロールし ていった。 初めて客観と主観の問題に、ぶつかって、どぎまぎした。 男は、ところどころでスクロールを停止して、そして、また速めていった。私の写真は今までは 主観であって、客観的評価に晒すのは初めての事だった。 ういういしい羞恥と、緊張が私を支配したのには、私も驚いた。 男は、オーナーに見せて、気に入ればメールで連絡するので、アドレスを残すように指示して、 そして、私の方は、やるとしても来年の事だ、と念を押してギャラリーを出た。 。。。。。。 今日も私は客観に騙された。 騙されて、そして、昨日一日のベッドの上での養生を意味の無いものにしてしまっている。 此の国では皮膚感覚が違うらしい。私には、分厚いセーターがいると思うのに、多数は、半そで のTシャツ姿で平気で流れている。 視覚的に、それを眺めていると,私までが薄着になってゆく。私だけがオーバーを着て、そして 街の人間は半そでのTシャツでは、どうもバランスが取れない。 私は、今日は、私の主観で決める<べき>だった。私の、体なのだから。 。。。。。。。。 スイカの4分の一のサイズをスーパーで買って持ち運んでいた。 たったの2ズイチ。未だに、こちらの通貨の呼び方が性格に解らない。 ともかくも60円。ワルシャワからクラコフの汽車の一等を買って3000円。3時間の旅の木戸賃 が、だ。 始まってしまったと、つぶやきながら、私は王宮の広場の上でスイカを、ほうばった。 じゅるっと、口の中で溶けて、熟れすぎの味が広がった。 始めなければ、始まらない。 その始まりが、始まったという事だろうか? もし、やってもよい、というメールが来たときは? 少し、これからの私のシャッターが重くなりそうな予感がした。 そして、日本に戻れば、新しい名刺でも作ってみるかと、悪寒の中で考えた。 今の私の名刺では、<今の>私には、あまりに、そぐわな過ぎる。
by tabibito9999
| 2006-09-28 20:17
| 漂流記
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